エジプト映画「EXT.Night」(2018)
この映画は2018年の暮れにカイロの映画館で見て、その後アフマド・アブダッラー監督にお話を伺った思い出の映画。先日MUBIで配信されているのを見つけて、駆け込みで再鑑賞した。
映画監督のムハンマド(通称モー)が、ある夜、ひょんなことからタクシーでカイロの街をうろつくはめになってしまうという物語。モーと、タクシー運転手のムスタファー、そして行きがかり上同乗することになった娼婦のトゥトゥの三人の間の人間模様を描く。
三人は社会階層が違う。そのために生活も考え方も、何もかも違う。エジプトの格差社会というか、人々の断絶ぶりが浮き彫りになる。
良くできているなと思うのが、3人が住んでいる場所だ。カイロ・アメリカン大学出身で映画監督のモーは静かで比較的ハイソサエティな地区、マアーディーに住んでいる。タクシー運転手のムスタファーは、その隣の庶民的なハダーイク・イル=マアーディーに、そして娼婦のトゥトゥはさらにその隣のもっと庶民的なダール・イッサラームに家がある。この三つは地下鉄では三つ並んだ駅なのだが、駅が一つ違うと文字通り「住む世界が違う」のだ。(と、アフマド監督はおっしゃっていた)
映画ではモーが、自分とは生活も考え方も全く異なる二人と接し、自分の殻を破っていけるかに焦点があてられているが、もう一つ、娼婦のトゥトゥに対する男性二人のふるまいを通して、女性が置かれている状況についても問題を提起している。エジプトやアラブ世界について予備知識がないと、わかりにくい部分があるけれど、格差とジェンダーという、みずみずしいテーマを扱いながら、2011年革命後のエジプトを描こうとした作品だ。
サブストーリー(おそらくモーの頭の中の映画の構想)として、上エジプトの男性が移民として地中海を渡ろうとする話が時おり挿入されるのだが、それが幻想的でとても美しく、見ていて胸がしめつけられる。
この作品から3年、アフマド監督が今どんな作品を作っているのか、気になる。

コメント
コメントを投稿