モロッコ映画「The unknown saint」(2019)

  砂と石ころだらけの、荒涼としたモロッコの村に、一人の泥棒がやってくる。泥棒は盗んだ金の入った鞄を、小山の上に埋めるが、その直後に逮捕され、刑務所に入れられてしまう。

 数年後、刑期を終えた泥棒は、金を掘り出しに村に戻ってくる。しかし金を埋めた場所には、何と聖者廟が建てられていた。(彼が金を埋めた場所が、「一夜にして未知の聖者の墓ができた奇跡の場所」と見なされたのだろう) 昼は村人や巡礼者が、病気快癒の願掛けに来て、夜は犬を連れた夜警が入り口で見張っている。果たして泥棒は金を取り戻せるのか…。

 

 コメディ映画で、思わず笑ってしまうシーンがたくさんあるが、ハリウッド映画のようなテンポの速さはなく、ゆっくりとした、かつシュールな展開だ。エリア・スレイマンとキャーロスタミーを7:3で混ぜ合わせたような感じ。ベージュと茶色の大地や建物に、ブルーやペパーミントグリーンのドアといった色使いの美しさが素晴らしい上に、サイドストーリーを彩る村人たちの造形も非常に面白い。予想もつかない方向に導かれるわくわく感もある。魅力的な映画だ。

 物語の一つの鍵が「雷」なので、見終わった後に『クルアーン』雷電章を読んでみたら、作品世界に対する理解が深まる気がした。この世の全てを作り、動かす神のみわざと、そのもとで生きる人間のあり方について、思いを馳せずにいられない。その上で、人々がどうやって聖者崇敬にたどりつくか、ということも示唆していて、イスラームという宗教の様々な要素が、これまでになくトータルに表現されているなあ、と感心してしまった。

アラビア語の原題も同じ。アラーエッディーン・アルジェム監督、2019年。




 



 

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